フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
特集Ⅰ Teaching Sociology―イメージとしての社会学―
人類学と社会学の未来に向けてのメモランダム
春日 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 4 巻 p. 18-25

詳細
抄録

最近の人類学と社会学では、研究対象と方法がともに接近し合い、学問固有の概念やモデルの差異を超えて、共通の準拠枠を求める動きが生まれている。それがどのような準拠枠であれ、両学問のフィールドワークにはアブダクティブな推論が不可欠であり、今後はアブダクションにふさわしい言説がさらに求められることだろう。チャールズ・パースが指摘するように、アブダクションは「ある状態である種の現象が現れるのを推測するという、われわれの希望に依拠し」ている。確かにアブダクティブな議論は、過去-現在についての既存の認識を脱却し、未来に向けたあらたな社会のイメージを希望として摑もうとするのだが、人類学と社会学はこれまで「希望」についての考察をほとんど試みることがなかった。本稿はエルンスト・ブロッホの議論を参照しながら、「希望」の考察が人類学と社会学の社会的有用性に関する知見を開く可能性について、フリーターの事例をつうじて示唆する。

著者関連情報
© 2005 関西社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top