抄録
栃木県のイチゴ栽培施設で普及可能なワタアブラムシ防除のためのバンカープラント法を検討する中で,代替寄主を生産者自ら採取して利用する場合を想定した試験を行った。代替寄主としてはムギクビレアブラムシとトウモロコシアブラムシが候補となるが,それらの有性世代の出現率を調査したところ,短日条件下において,ムギクビレアブラムシは産雌虫および雄虫を産子したのに対して,トウモロコシアブラムシは胎生雌虫のみを産子し,有性世代が出現しなかった。よって,本県において生産者が代替寄主を野外採取する場合はトウモロコシアブラムシのほうがより安定してバンカープラント法に用いることができると考えられた。また,実験圃場において,オオムギ上で代替寄主トウモロコシアブラムシを維持するバンカープラントを設置して天敵コレマンアブラバチを放飼したところ,天敵を長期間維持することができ,このバンカープラント法により防除効果を高められる可能性が示唆された。