関東東山病害虫研究会報
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最新号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
イネ・ムギの病害
  • 中島 宏和
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 1-8
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    温湯処理と催芽時処理(醸造酢液剤,過酢酸液剤,タラロマイセス フラバス水和剤,トリコデルマ アトロビリデ水和剤(DJ))の体系処理は,イネばか苗病に対して,イプコナゾール・銅水和剤と比較して同等ないしやや劣ったものの総合的にみて高い防除効果が認められた。また,事前乾燥を取り入れた65℃・10分間または60℃・10分間の温湯処理による体系処理の比較では,いずれの体系処理でもほぼ同等の高い防除効果が認められた。発芽率に関しては,前年産の種子を使用する場合は問題ないが,2年以上前に採種した種子を使用する場合は,事前に発芽率の調査等が必要と考えられた。有機物含量の多い軽量培土は,粒状培土と比較して,イネばか苗病,イネもみ枯細菌病の苗腐敗症の発病に対して抑制的に作用し,特に苗腐敗症に対する発病抑制効果が高かったが,生物農薬の場合は,軽量培土の方が粒状培土よりイネばか苗病の発病が多くなった。本田でのイネばか苗病に対しては,温湯処理またはDJの単独での防除効果は低かったが,温湯処理は60℃,65℃ともDJと体系処理することでイプコナゾール・銅水和剤と同等の防除効果が得られた。

畑作物・野菜の病害
  • 月居 佳史, 井上 康宏, 藤川 貴史
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 9-14
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    サツマイモ基腐病は,糸状菌の一種であるサツマイモ基腐病菌(Diaporthe destruens)によって引き起こされ,日本のサツマイモの安定生産において大きな懸念材料となっている。Fujiwara et al.(2021)が開発したリアルタイムPCR法による基腐病菌の検出法は,高感度かつ特異的に本菌を検出できるが,診断現場への実装においては,誤診を回避することやDNA抽出工程の向上が不可欠であると考え,リアルタイムPCR法やDNA抽出工程の改良を行った。リアルタイムPCR法の改良点として,サツマイモDNAを標的とするプライマーを設計し,これを用いたPCRを行うことでDNA抽出とPCRが正常に実施されていることを判定できるようになった。また,既報の基腐病菌特異的プライマーによるPCRは,基腐病菌以外のサツマイモに感染しうる菌類のDNAを増幅しないことを確認した。さらに,DNA抽出工程における各操作方法を検討したところ,DNA抽出前の試料の洗浄や破砕方法を最適化することができた。本研究で改良した基腐病菌の検出法は本病の診断に利用できる。

  • 佐藤 豊三, 吉永 実記, 五十嵐 元子, 埋橋 志穂美, 芝野 真喜雄
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 15-18
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    Few sprouts were found from stolons of Glycyrrhiza glabra cultivated in Osaka Pref. in 2020. The stolon pieces were almost rotted with browning in vessels and bore white molds under moist condition. A fungus was often isolated from the damaged stolon pieces. Inoculations with a representative isolate to G. glabra not only reproduced the stolon rot but caused base rot and blight on healthy seedlings of G. glabra and Glycyrrhiza uralensis. The same fungus as the inoculum was re-isolated from the diseased seedlings. The isolate formed a colony with white to pale yellow aerial mycelia with ocher color on reverse side of PDA culture. Its micro-conidiophores were straight or slightly curved, smooth, hyaline, septate, sometimes branched, elongated obclavate to cylindrical, with monophialides on the apices. Microconidia were hyaline, 1 or 2-celled, smooth ellipsoid to boat-shaped. Macroconidia were 3-5 septate, hyaline, smooth, falcate. Chlamydospores were hyaline, thick walled, 1 or 2-celled, sub-spherical to ellipsoid, smooth or verrucose. The isolate was identified as Fusarium vanettenii based on the morphology, rDNA-ITS and Histone H3 sequences. We propose a name, base and stolon rot (‘kabugare byo’ in Japanese), for the new disease.

  • 石山 佳幸
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 19-22
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    長野県のレタス栽培圃場で,これまで国内未発生であったレタスコルキールート病が確認され,産地で発生が増加している。本病に対する農薬登録を拡大し,蔓延を防止するため,土壌くん蒸剤の防除効果について検討した。その結果,クロルピクリン錠剤,ダゾメット粉粒剤はいずれの試験でも,高い防除効果が認められ,薬害は認められなかった。なお,現地慣行のガス抜きの作業工程を省いたマルチ畦内処理法でも高い効果が認められた。またダゾメット粉粒剤を春期に処理した場合,薬剤処理78日~90日後の夏秋期においても防除効果が認められた。

  • 山内 智史
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 23-25
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    白さび病に対するコマツナ市販品種間の感受性差異を調査したところ,「いなせ菜」は本病に対して極めて強い耐病性を持ち,その他の品種では,最も低い発病度を示した「夏の甲子園」から段階的に高くなる傾向が認められた。また,平均気温が14.9~24.3℃の本試験条件下では気温の上昇に伴って発病度が高くなるとともに,本病に対する耐病性と非耐病性の差異がより明瞭になった。

  • 井上 浩, 竹元 剛, 佐古 勇, 西村 昭, 福田 侑記
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 26-32
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    Sclerotium cepivorum Berkeleyが引き起こすネギ黒腐菌核病の防除のため,夏どり作型におけるピラジフルミド水和剤のセル成型育苗トレイまたはペーパーポット灌注処理の防除効果および散布との体系処理の適用について土壌消毒を実施しない圃場で検証した。ピラジフルミド水和剤は,定植当日の100倍液のセル成型育苗トレイ灌注処理によって,年末の植付けで,翌春に感染,発病適期になる夏どり作型において優れた防除効果を示した。本剤のセル成型育苗トレイ灌注処理により,ネギ茎盤部および茎盤部近傍葉鞘部では,病原菌の感染を抑制したが,感染前の3月下旬までに2,000倍,300 L/10 aを追加散布することで,茎盤部上部の軟白葉鞘部への感染も抑制し,さらに安定した防除効果が得られることを確認した。

果樹の病害
花卉・花木・樹木の病害
研究手法
イネ・ムギの虫害
  • 八塚 拓, 平江 雅宏, 薗部 彰, 小林 則夫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 57-60
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    2021年8月から9月に茨城県内2地点で採集したイネカメムシ個体群を用いて16L-8Dの日長条件下で,22,25,28,31℃の各温度で卵塊ごとにそれぞれ集団飼育し,卵から羽化までの発育日数を調査した。飼育温度が高いほど幼虫の発育期間は短縮したが31℃では発育の遅延が認められた。飼育温度22,25,28℃では発育速度と温度との間に高い相関関係が認められ,発育速度と温度との回帰直線から算出した卵から羽化までの発育零点は15.8℃,有効積算温度は344.8日度であった。また,2齢幼虫以降に個体別に飼育した場合でもほぼ同様の結果が得られた。得られたパラメータを用いた発生時期の予測手法の適合性を検証するため,水田における本種の発生時期と,メッシュ農業気象データシステムで得られた調査地点の気温データを用いて有効積算温度から予測した発生時期との比較を行った。その結果,水田での発生時期が1齢から羽化まで28日であったのに対し,予測では32日となり,4日程度の違いがあった。本研究では孵化率や羽化率が低かったことから餌や水分条件等の飼育環境を改善する必要があると考えられる。

  • 阿曾 和基, 髙野 萌, 若林 秀忠, 栗原 潤
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 61-64
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    イネ縞葉枯病の被害解析を行い,前年のイネ縞葉枯病発病株率またはヒメトビウンカのイネ縞葉枯病ウイルス保毒率に基づく要防除水準を策定した。水稲栽培の粗収益に対する薬剤費の割合から経済的被害許容水準を収量の1.5%とした。9月上旬~中旬のイネ縞葉枯病の発病株率約24%以上で減収率が経済的被害許容水準を超えると考えられた。ロジスティック回帰分析により経済的被害許容水準を超える被害発生確率が50%となる前年の8月下旬のイネ縞葉枯病発病株率または8月下旬~9月上旬のヒメトビウンカ保毒虫率を推定したところ,それぞれ約30%及び約10%となった。以上から,長野県におけるイネ縞葉枯病の要防除水準を前年の登熟中期頃のイネ縞葉枯病発病株率30%またはヒメトビウンカ保毒虫率10%に設定した。

  • 平江 雅宏, 石崎 摩美, 石島 力
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 65-70
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    カラー粘着トラップに対するイチモンジセセリ成虫の誘引性について検討するため,水田内に黄色,青色,白色,白色板に青色の格子模様(以下,白色青格子)の粘着板を設置して捕獲数を調査した。イネの草冠高に粘着板を垂直に設置した場合,青色粘着板における成虫捕獲数が最も多く,次いで白色粘着板または白色青格子粘着板で多く,黄色粘着板は少なかった。粘着板の設置方法や設置場所について検討したところ,青色粘着板を垂直に設置したトラップで多く捕獲される傾向にあり,畦畔際と比べて水田内で捕獲数が多かった。また,粘着剤の種類や粘着剤の塗布方法による捕獲効率への影響について調べたところ,ポリエチレン製フィルムを被覆して粘着剤を塗布した粘着板では,カラー板に直接粘着剤を塗布した場合と比べて捕獲数が減少した。本種成虫のみのモニタリングを目的とする場合は青色粘着板を垂直に設置し粘着剤を直接塗布したトラップが適していると考えられた。また,白色粘着板は青色粘着板より捕獲数は少ないものの,水稲害虫複数種の発生消長を効率的に把握するための調査用トラップ資材として活用可能と考えられた。

畑作物・野菜の虫害
  • 村田 未果, 飯田 博之, 田中 彩友美, 水谷 信夫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 71-74
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    侵入害虫であるツマジロクサヨトウについて,国内で栽培されているイネ科作物品種を餌とした場合の発育について調査した。トウモロコシのうち飼料用トウモロコシ2品種(「ゴールドデント」および「P8025」),食用トウモロコシ1品種(「ゴールドラッシュ」),ソルガム(「ハイブリッドソルゴー」),イタリアンライグラス(「ワセユタカ」)の葉を本種の幼虫に給餌し羽化まで飼育した。全ての作物・品種において本種は羽化まで発育したが,ソルガムで飼育した個体の生存率は他の2作物4品種に比べ有意に低く,イタリアンライグラスは発育期間が最も短く蛹体重が有意に重かった。トウモロコシについては,「P8025」における発育期間が他の2品種に比べ有意に長く,羽化個体の産卵数は「ゴールドデント」が多かった。以上より,作物間で,また同じ作物でも品種間で発育に差があること,幼虫期に摂食した品種が産卵数に影響を及ぼすことが明らかとなった。

  • 白川 純蓮, 栗田 瑠夏, 中村 晃紳, 糸山 享
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 75-77
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    神奈川県川崎市に所在する明治大学生田キャンパスにおいて,2019年6月に露地栽培キュウリに発生したワタアブラムシを対象として,クロチアニジン水溶剤2000倍液を散布したところ,還元澱粉糖化物液剤100倍液の2回散布より防除効果が劣ったことから,ネオニコチノイド系殺虫剤に対する抵抗性が発達した個体群の定着が疑われた。そこで,2023年4月に同キャンパス内に設置したキュウリ苗に飛来したワタアブラムシ有翅虫から得たクローンを対象として,抵抗性遺伝子の有無を調査したところ,抵抗性遺伝子は検出されなかった。本研究では抵抗性が発達した個体群の定着は確認されなかったが,今後は飛来源を想定した広域での調査を行う必要がある。

  • 片井 祐介, 小髙 宏樹, 久松 奨
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 78-80
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    ワサビ田で栽培される水ワサビの育苗では,化学合成農薬の適用が少なく,「野菜類」に適用のある気門封鎖型農薬が主に使用されている。しかし,静岡県内の生産者から気門封鎖剤による防除効果が低いとの意見がある。そこで,育苗時に問題となるモモアカアブラムシに対して,気門封鎖型農薬4剤(オレイン酸ナトリウム液剤,デンプン液剤,還元澱粉糖化物液剤,ソルビタン脂肪酸エステル乳剤),微生物農薬1剤(ボーベリア・バシアーナ乳剤),化学合成農薬1剤(ジノテフラン顆粒水溶剤)を茎葉噴霧により防除効果を調査した。一方,畑で栽培される畑ワサビでは,「野菜類」と「畑ワサビ」に加え「非結球あぶらな科葉菜類」に適用のある農薬が使用可能であり,これらのうちから化学合成農薬6剤(アセフェート水和剤,アセタミプリド顆粒水和剤,イミダクロプリドフロアブル,クロチアニジン水溶剤,ジノテフラン顆粒水溶剤,フロニカミドDF)について葉片浸漬により殺虫効果を調査した。気門封鎖型農薬,微生物農薬,化学合成農薬の茎葉噴霧ではすべての剤で補正密度指数が5.7以下であった。化学合成農薬の葉片浸漬では,剤の種類により差が見られアセフェート水和剤,アセタミプリド顆粒水和剤は7日後の補正密度指数が6.1以下であった。一方,ジノテフラン顆粒水溶剤,フロニカミドDFの7日後の補正密度指数は,それぞれ24.2,33.3であった。

  • 三浦 早貴, 矢野 栄二
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 81-85
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    雑食性の捕食者タバコカスミカメは,植物種によってはその植物質のみを摂食しても増殖できる。このような植物は,代替寄主や代替餌なしで,バンカー植物として利用できる。これまで,ゴマ,クレオメ,バーベナ,スカエボラのバンカー植物としての利用が提案されてきた。本研究では,植物質のみで増殖できるバンカー植物のさらなる候補として,スイートアリッサムをとりあげ,本種の発育,生存,産卵を25℃,16L8Dの条件下で調べ,ゴマあるいはクレオメを与えた場合と比較した。その結果,スイートアリッサムの葉と花の両方を与えた場合の卵期,幼虫期の平均発育日数は,それぞれ9.7日,19.3日,その間の生存率は100%,58%であり,羽化後21日間の雌1頭当たりの平均総産卵数は25.1卵,21日後の生存率は71%であった。また幼虫期の平均発育日数,雌1頭当たりの平均総産卵数はクレオメの葉を与えた場合と有意差はなかったが,ゴマの葉を与えた場合より,発育日数は有意に長く,産卵数も有意に少なかった。以上より,花の存在するスイートアリッサムのバンカー植物としての適性は,花無しのゴマより劣るものの花無しのクレオメと同程度と考えられた。スイートアリッサムはバンカー植物としての利用の可能性が期待される。

茶の虫害
  • 小俣 良介, 宮田 穂波
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 70 巻 p. 86-89
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/06/14
    ジャーナル フリー

    The seasonal occurrence of scarabaeid beetle adults captured in the fluorescent trap set up in the tea field in the Saitama Tea Research Institute, located in Iruma region of Saitama Prefecture, in 2022 was investigated. And we examined what changes had occurred compared between 1992 to 2022, which is 30 years later. The number of scarabaeid beetle species captured in 2022 was 18, down from 23 in 1992. In 1992, the top five species with the highest number of captures were Heptophylla picea, Anomala rufocuprea, Blitopertha orientalis, Anomala cuprea and Maladera castanea. In contrast, the top five most frequently captured species in 2022 were Anomala rufocuprea, Anomala albopilosa, Anomala cuprea, Heptophylla picea, Blitopertha orientalis. Especially Anomala albopilosa, which was not captured at all in 1992, became the second most numerous species. In addition, Hoplia communis, Anomala octiescostata and Amphicoma pectinata, which were not captured in 1992, were captured. Heptophylla picea, an important pest insect of tea, was the most common species in 1992 with 932 captures and a female rate of 11%, but in 2022 the number of captures decreased to 70. However, the female rate increased slightly to 15.7%.

果樹の虫害
第 69 回研究発表会講演要旨
その他
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