抄録
2010年10月に神奈川県茅ヶ崎市のコマツナ炭疽病甚発生圃場内または周辺のホトケノザとスベリヒユの葉に灰色~褐色の小円斑症状を認め,罹病部からはColletotrichum属菌が高率に分離された。同地のコマツナ・ホトケノザ・スベリヒユ各分離菌を相互接種した結果,各菌とも病徴を再現し,接種菌が再分離された。各分離菌の病原性,形態的特徴およびrDNA-ITS領域の塩基配列の相同性から,分離菌をいずれもColletotrichum higginsianum Saccardoと同定した。以上より,コマツナ炭疽病菌がアブラナ科以外の植物に病原性を有すること,同科以外の植物に寄生する炭疽病菌がコマツナに感染することが明らかになった。また,コマツナ炭疽病菌の伝染環の一つとして周辺野草が役割を果たす可能性が示唆された。ホトケノザとスベリヒユにはColletotrichum属菌による病気は未記録なので炭疽病 (新称) を提案する。