2017 年 2017 巻 64 号 p. 1-5
アブラムシやコナジラミなどが媒介する植物ウイルス病は農業生産に重大な被害をもたらす。虫媒性ウイルス病の伝染には媒介虫の存在が不可欠であるが,病気の流行には媒介虫以外にも様々な環境要因が関わっている。著者らは北日本のダイズ生産地で問題となるダイズわい化病について,媒介アブラムシの生態と病原ウイルスの伝染環の調査から,ウイルス源となるクローバ類からの一次感染が5月から6月の時期に限って起きることを明らかにし,本病の耕種的な防除対策を提案した。また,温暖地のトマト施設栽培で問題となるトマト黄化葉巻病について,媒介コナジラミの発生状況と保毒率を調査し,春に栽培を終了したトマト生産農家の施設から脱出した保毒虫や栽培施設周辺の罹病した野良生えトマト等がウイルス病流行の主要因であることを示すとともに,トマト産地での黄化葉巻病伝染環の遮断に必要な対策マニュアルを提示した。