関東東山病害虫研究会報
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病害の部
Fusarium oxysporum によるニンジン乾腐病(病原追加)
金子 洋平横山 とも子中田 菜々子深見 正信中村 耕士山本 幸洋大井田 寛福田 寛
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2017 年 2017 巻 64 号 p. 18-22

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抄録

2014年5月に,千葉県北西部の春夏ニンジンの産地で激しい割れを伴うしみ症の多発生が確認された。罹病株から菌を分離したところ,発色と形状が異なる2種類のコロニーを形成する菌株群が分離された。そこで,両菌株について形態的特徴の観察,生育温度特性試験,EF1α及びITS 領域の塩基配列の解析及び病原性の確認試験を行った。その結果,従来からニンジン乾腐病の病原菌として知られるFusarium solani, およびそれ以外の菌種が存在した。その分離菌株は,分生子柄および分生子,大型分生子,および厚膜胞子の形状からF. oxysporum であると推察された。本菌株は10 ~35℃で生育し,最適温度は25℃であった。さらにEF1α及びITS 領域の塩基配列は,F. oxysporum の配列とそれぞれ99.0及び97.0%一致した。以上から,分離菌をF. oxysporum と同定した。 蒸気滅菌した黒ボク土に分離菌の分生子懸濁液を接種した汚染土にニンジンを播種し,栽培したところ,根部にF. solani による乾腐病と同様の黒変及び亀裂を伴うしみ病斑が形成され,そこから本菌を再分離できた。また,現地で発生しているような病斑部分からの割れ症状も再現できた。以上より,本菌の同定,ニンジンに対する病原性が確認できたので,ニンジン乾腐病の病原としてF. oxysporum の追加を提案する。

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© 2017 関東東山病害虫研究会
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