関東東山病害虫研究会報
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研究手法
CAPS マーカーによるクビアカツヤカミキリと他種カミキリムシの識別
春山 直人 栗原 隆
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2022 年 69 巻 p. 92-97

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抄録

栃木県では,2017 年にクビアカツヤカミキリによる被害が初めて確認され,2022 年 4 月時点では県南部の 6 市町に分布域が拡大している。本種は幼虫がモモ,スモモ,ウメやサクラ等の樹皮下を食害し,やがて樹木を衰弱・枯死に至らしめる。本種は特定外来生物に指定され,分布拡大防止のために被害の早期発見と早期防除の取組みが実施されている。本種の被害が疑われる樹木が発見された場合,主に排糞孔から排出されるフラスやその内容物の形状によって簡易的な同定が行われる。一方で,若〜中齢幼虫の期間は排出されるフラス量が少なく,構成物も小さいため特徴が確認しにくい。また,カミキリムシの幼虫は形態的特徴が類似しており,特に若〜中齢期の識別に資する知見は乏しい。クビアカツヤカミキリが加害するモモやサクラでは,しばしば在来種のゴマダラカミキリやウスバカミキリの寄生もみられるため,前記の理由から確実な同定が難しいケースも多い。そこで,カミキリムシの同定診断の知識・経験を必要としない,他種との識別が困難な幼虫等の診断に有効なツールとして,クビアカツヤカミキリを識別可能な cleaved amplified polymorphic sequence (CAPS) マーカーを開発した。本県内および国内他地域のクビアカツヤカミキリ個体群の塩基配列を比較検討した結果,本マーカーは少なくとも北関東地域のクビアカツヤカミキリ個体群で活用でき,他地域の個体群でも有用な可能性があると考えられた。また,現場からの診断依頼では,サンプルがクビアカツヤカミキリ以外のカミキリムシであった場合,詳細な種までの診断結果が求められることも多い。CAPS マーカーは様々な生物種で種や系統の識別に用いられており,本マーカーについても他のカミキリムシ種の診断に有効な可能性があると考えられた。そこで,一般的にみられるカミキリムシのうち,クビアカツヤカミキリの疑いをもって診断依頼がなされる可能性がある種として,クビアカツヤカミキリが寄生するモモやサクラから得られる種,幅広い広葉樹を利用する種,被害様相がクビアカツヤカミキリに類似しており混同されやすい種から,主要な 23 種を選定し,開発されたマーカーによるバンドパターンを比較した。その結果,PCR 増幅産物が認められた 17 種全てにおいて,種特異的なバンドパターンが認められたことから,本マーカーはクビアカツヤカミキリ以外のカミキリムシでも種の診断に一定程度有用であることが示唆された。

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