抄録
山梨県のモモ, スモモ, オウトウ等において, 近年, ナシマルカイガラムシの被害が問題となっている。そこで, 2004年から2005年にかけて, モモを対象に, ナシマルカイガラムシの発生実態および防除対象となるふ化幼虫の発生消長を調査した。その結果, ナシマルカイガラムシの発生面積および発生量は, 調査期間中にも急激な増加が認められた。発生の程度は地域によって異なり, 甲府盆地西部および東部は地域全体で発生圃場割合が高く, ナシマルカイガラムシの寄生度も高かった。多発圃場において, ふ化幼虫の発生は, 第1世代が5月5半旬から始まり, 6月1半旬にピークが認められた後, 発生が7月上中旬まで見られた。第2世代は7月下旬から認められ, 当世代が終息する前に第3世代が発生し, 調査を終了した9月下旬まで継続的に発生が見られた。このように, 長期間ふ化幼虫が発生していることは, 薬剤による防除効果を低下させる大きな要因と考えられた。