抄録
近年, 長野県のトルコギキョウ産地において, ネギアザミウマが媒介するアイリスイエロースポットウイルス (IYSV) によるえそ輪紋病が問題となっている。被害の多い産地では, 水田裏作としてIYSVの感染植物であるタマネギが栽培されている。そこで, これら産地において, ネギアザミウマの誘殺消長とIYSV保毒虫率の推移を調査した。その結果, トルコギキョウの栽培施設内およびその周辺では, ネギアザミウマが5月中旬から誘殺され, その数は次第に増加した。特に, タマネギ栽培跡地への稲作用水注入時期にあたる6月下旬の10日間で, タマネギ栽培跡地に面した調査地点での誘殺数はピークとなり, 保毒虫率も約25%に達した。ネギアザミウマの侵入防止対策として, トルコギキョウ栽培施設開口部に0.6mm目合いの防虫ネットを設置したところ, 施設内のネギアザミウマ誘殺数は著しく減少した。このことから, 本病の防除対策として, 施設開口部に0.6mm目合い程度の防虫ネットの設置が有効と考えられた。