2021 年 16 巻 p. 13-26
グループ学習は、少人数の相互作用により思考が深まるなど、様々な学習効果が期待できる。しかし教室の中には、学び合いが苦手な児童も少なからず存在する。本研究では、国語科授業において授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in Classroom; 以下RTC)に共感的配慮行動促進を組み込んだ介入を行い、クラス全体への効果を検討するとともに、学び合いが苦手なA児を対象とした質的・量的な事例的検討を行った。RTCによる「役割付与」・「話し合いの手順の提示」という話し合いの構造化に加え、友達への情動的な援助行動(共感的配慮行動)を促した結果、グループ学習後の学級全体の詩の読みが向上した。また通常のグループ学習では緊張して固まってしまうことの多いA児が、グループ学習に参加し、詩の読みを広げたり深めたりすることができた。グループの話し合いのプロセスを分析した結果、A児のグループ学習への参与を促したのは、友達からのアドバイス(認知的援助行動)に加え、なかなか発言できないA児の発言を「待つ」という行為(共感的配慮行動)である可能性が示された。