2016年12月に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立した。本稿は本法制定論議の時期区分と主な論点、制定に関わった主体・潮流の整理を通じて本法制定の経過と帰結を考察した。フリースクール団体の提案が法案審議に進んだのは、政策決定構造の変化を背景に、政府の能力開発・社会投資政策の枠組みに位置付けられたからである。法案についての厳しい意見対立は、教育の新たな政治的対立図式が顕在化したものと捉えられる。しかし、不登校対策を主な内容とする法の成立という帰結は、学校を越えることの困難をも示している。