2019 年 86 巻 4 号 p. 485-496
海外から日本の教育へは様々注目されてきたが、その中でも日本社会における識字率の高さや教育の普及が日本の近代化や現代の科学技術の高さの背景にあるという論調は多い。しかし、近世社会における識字率の高さが人々の生活にどのような影響を及ぼしたのかは十分に検証されてこなかった。本論文では、近世初期において文字の字体、文法、書式などが全国的に共通化され、また文字を使用することが必須化されたことを指摘し、そうした文字社会の成立が日本の近代化と深いかかわりを持っていたことを論じた。