抄録
本研究では、感情への理解を深め適切に対処するスキルの獲得を目標とし、中学生を対象としたSELプログラムを実施した。特別活動の授業時聞を使用し、全3回の指導案によりプログラムを構成した。プログラムの効果を検討するために、SEL実施前後の感情知能得点の変化について解析を行った結果、性別やクラスによる実践の効果に差はみられず、普段間接的に関わる役割であるスクールカウンセラーでも、同じ指導案を用いた予防教育において教員と同じ程度の役割を果たす可能性が示唆された。また、プログラム実施前に自己評価の低かった生徒は実施後プラスの方向に変化した一方で、高かった生徒はマイナス方向への変化が見られた。このことは、授業を受けて感情への付き合い方に自信をつけた低群と、自分はできていると安易に捉えていた感情への取り組みが、良い意味で慎重になった高群といったように、個々の生徒がそれぞれに授業の内容を受け取り、感情知能の評価に変化をもたらしたものと思われる。中間群の生徒にも概ねプラスの変化が見られたことから、本研究におけるSELの実践は、生徒の感情との付き合い方に多くの示唆を与える有効な取り組みであったと考える。