1979 年 10 巻 2 号 p. 133-141
嫌気的条件下に棲息するブタ回虫は, 代謝終産物としてコハク酸を生成することが知られている。この生成系について以下の結果を得た。1. ブタ回虫筋のコハク酸生成系に関与している酵素のうち, malic enzyme, fumarase, fumarate reductaseの細胞内分布は, いずれもミトコンドリア分画より可溶性分画に多く存在していた。2. 可溶性分画のfumaraseは筋肉ホモジネートの9, 000∿100, 000×g沈渣への吸着が認められ, この結果その沈渣のfumarase活性は74%の著しい増加を示した。3. 基質としてフマル酸, electron donerとしてNADHを用いた時のブタ回虫筋の100, 000×g上清による嫌気的なコハク酸生成は, 9, 000∿100, 000×g沈渣を加えるとpH 7.4では約4倍, pH 7.0では約3倍, pH 6.5では約2倍に増加した。