杏林医学会雑誌
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Epstein-Barr ウイルス感染 B リンパ球を用いて染色体モザイクを検出した一症例
岸 邦和山本 興太郎
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1984 年 15 巻 4 号 p. 509-513

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抄録

染色体モザイクや染色体キメラの検出は, 患者が発生する原因となった染色体異常の誘発された時期を推定する際に情報を提供するばかりでなく, 患者の臨床症状と染色体異常の関連を考察する際の条件となる。通常, 染色体の分析は, PHAで刺激したりTリンパ球や皮膚線維芽細胞を用いて行なわれるが, Epstein-Barrウイルス(EBV)を感染させたBリンパ球の分析も有効な手段と考えられる。著者らは, 比較的軽度な臨床症状を示す環状10番染色体を有する症例において, PHA刺激Tリンパ球や皮膚線維芽細胞では検出しえなかった正常細胞の存在を, EBV感染Bリンパ球によって確認した.その結果, 環状染色体の形成は受精卵の発生過程でおこったと考えられることおよび患者の軽度な症状は正常細胞の存在によると推定されることを示した。本症例により, EBV感染Bリンパ球を用いた染色体検査の有用性を例示した。

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© 1984 杏林医学会
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