抄録
2世代の同胞群について, 両親の近親婚が子供の死亡率に及ぼす影響を検討し, その世代間推移の考察を試みた。九州地区の2大学の医学部学生を発端者としてアンケート調査を行い, 312家系の資料を得た。その結果, (1)発端者の祖父母の近親婚により, その子供(発端者の父母の同胞群)の19歳以下(特に0∿1歳)の死亡率が有意に高くなることが確認された。発端者の父母の近親婚によるその子供(発端者の同胞群)の死亡率への有意な効果は検出できなかった。(2)両親が他人婚の場合どうしでみると, 発端者の同胞群における死亡率が発端者の父母の同胞群における死亡率より有意に低いことが確認された。両親が近親婚の場合どうしでみると, 統計的に有意ではないが同様の傾向がみられた。(3)近親婚率も世代の違いにより減少していることが確認された。(4)このように死亡率全体に占める近親婚の影響は近年減少しつつあると思われる。