抄録
ヒト血小板より精製細胞膜標本を作製し,加齢ならびに動脈硬化症が血小板α_2受容体の動態に及ぼす影響について調べた。また同時に,血漿カテコールアミン濃度,血小板凝集能,血小板放出物質の測定を行い,α_2受容体との関連について検討した。健常群において,年齢とα_2受容体量との問に有意な負の相関を認め,さらに年齢と血漿norepinephrine濃度との間には有意な正相関を認めた。また,血小板α_2受容体量と血漿norepinephrine濃度とに有意な負の相関を認めた。従って,加齢による血小板α_2受容体量の減少は,血漿中のカテコールアミンによるdown regulationと考えられた。疾患群では,高齢対照群に比し,血小板α_2受容体量の低値とepinephrine凝集能の亢進を認め,また,その変化は労作性狭心症群で有意であった。このことから,動脈硬化症における血小板α_2受容体の減少は,血小板易刺激性の指標となる可能性が考えらられた。