杏林医学会雑誌
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成熟マウスにおけるコレラモデルの開発 : 特にコレラ菌の小腸内増殖性と定着性および毒素産生性について
田口 晴彦
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1990 年 21 巻 4 号 p. 419-427

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抄録

成熟マウスにおけるコレラモデルの開発を目的として,胃酸分泌抑制および蠕動運動抑制処置を施したマウスにコレラ菌を感染させ,その動態を検索した。胃酸分泌抑制にはcimetidine,また蠕動運動抑制にはatropine sulfateを用いた。胃酸分泌抑制処置は,コレラ毒素により誘導されるマウスの腸液貯留値を上昇させた。胃酸分泌抑制処置および蠕動運動抑制処置を施したマウスにコレラ菌とコレラ毒素を同時投与すると,コレラ菌のマウス小腸への定着性が高まり,長期排菌を呈することが明らかとなった。また3.2〜7.0×10^3CFU/mlのコレラ菌は,マウス腸液中で37℃,20時間振盪培養され,3.7〜9.0×10^8CFU/mlにまで増殖し,1ng/mlのコレラ毒素を産生した。これらの結果は,成熟マウスにおけるコレラモデルの開発の可能性を高めるものであった。

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© 1990 杏林医学会
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