杏林医学会雑誌
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担癌生体におよぼす輸血の影響に関する研究 : 臨床的、実験的検討
竹内 教能
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1992 年 23 巻 3 号 p. 401-417

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抄録

輸血による担癌生体に対する影響を臨床的,実験的に検討した。臨床的には大腸癌,胃癌(stage I),乳癌(stage II, III,IV)の治癒切除例について,輸血群,非輸血群に分け,さらにそれぞれ両群間に背景因子に有意差がないことを確認後,予後について比較した。生存再発率のグラフはKaplan-Meier法に基づいて示し,有意差検定はgeneralized Wilcoxon法によった。また背景因子の有意差検定は,X^2検定によった。輸血群は非輸血群に比較し,大腸癌では生存率において有意(p<0.0001)に低値を示し,乳癌では再発率において有意(p<0.05)に高値を示した。また胃癌では,輸血群の生存率において低値を示す傾向にあった。実験的には, C3Hマウスを用い,その移植腫瘍の増殖に対する輸血の影響を検討したが,輸血することにより腫瘍増殖は有意に促進された。輸血の量,時期の違いでは腫瘍増殖に差を認めず,成分ではリンパ球(その膜成分のみでも)輸血によりもっとも腫瘍増殖は促進された。

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© 1992 杏林医学会
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