杏林医学会雑誌
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腹腔鏡下腫瘤生検が診断に有用であった悪性リンパ腫の1例
徳植 秀樹中島 洋柴山 淳高須 政夫和田 修江渡 博之斎藤 昌三新川 定跡見 裕立川 勲
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1994 年 25 巻 4 号 p. 589-592

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抄録

症例は65歳,女性。C型慢性肝炎にて近医に通院中であったが,腹部超音波検査および腹部CT検査にて膵頭部付近に40mm大の腫瘤を認めたため精査目的に当科入院した。入院時,心窩部に4cm大,弾性硬の腫瘤を触知したが,表在リンパ節は触知しなかった。Gaシンチグラムにて同部に異常集積像がみられた。質的診断不能のため腹腔鏡検査を施行した。肝円索直下に鶏卵大の腫瘤を認めた。腫瘤を狙撃生検し,生検部にはgelform powderを注入することにより出血を防止することが可能であった。生検組織にて悪性リンパ腫と診断した。当院外科にて腫瘤摘除術を施行し,腫瘤摘出標本にてnon-Hodgkin, malignant lymphoma, diffuse, large cell type, B cell type (WF病理分類による)と診断した。術後CHOP (Cyclophosphamide, Adriamycin, Vincristine, Predonisolone)療法を3クール施行し,1年2ヶ月経過した現在も再発は認められない。質的診断が困難な腹部腫瘤に対し腹腔鏡下腫瘤生検が有用であった悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する。

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© 1994 杏林医学会
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