脂肪酸のインスリン合成に及ぼす影響につき,ラットの単離膵ランゲルハンス氏島(ラ氏島)を用い,in vitroでのパルミチン酸(PA)による効果を検討した。〔^3H〕leucineのインスリン分画への取り込みを指標としたインスリン合成は11mM glucose刺激により著明に増加した。PAの添加はこれを用量依存性に抑制し,1.0mM PAの添加で約40%に減少した。また,この抑制作用はPAの除去により消失した。一方,Northern blot解析法を用いて測定したインスリンmRNA量はPAの添加で影響を受けず,PAはインスリン合成を翻訳過程において抑制していると考えられた。PAの添加は膵ラ氏島におけるglucose transporter (GLUT2)蛋白量には影響を与えなかった。しかし,膵ラ氏あのglucokinase蛋白量およびその活性をコントロールの約40%に抑制した。以上の結果より,PAはglucoseによるインスリン合成を抑制し,glucokinaseがその一因として関与している可能性が示唆された。