1996 年 27 巻 4 号 p. 541-548
網膜は脳と比較して長時間の虚血に耐えうるとされている。本研究では脳と網膜において虚血中には神経毒性のあるグルタミン酸濃度の推移に違いがあるかを検討した。麻酔下のラット12匹を用いた。大脳皮質および網膜に連続的グルタミン酸濃度測定用の酵素電極を刺入し,レーザードップラー血流計にて血流量を測定した。両側頸動脈結紮および脱血により,20分間の脳及び網膜の虚血を起こし,その後,1時間再灌流を行った。網膜では虚血開始後,グルタミン酸は12側中10側にて低下し,166±242μM/Lより124±155μM/Lに変化した。一方,脳では虚血直後より全例上昇し,81±97μM/Lより449±271μM/Lに有意に増加した。再灌流後,網膜及び脳では157±215μM/Lおよび136±215μM/Lと両者ともほぼ,虚血前値に回復した。網膜では脳とは異なり,短時間虚血ではグルタンミ酸濃度は低下することが示された。