杏林医学会雑誌
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小児自閉症患者における音刺激効果の心拍数への影響
石田 信彦原島 敬一郎飯塚 洋人守田 美奈子西村 伸大志田 一彦遠山 日出男中根 信順小橋 隆一郎松田 博雄成瀬 浩
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1997 年 28 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

小児自閉症患者における感覚統合障害の一貫として聴覚異常に注目し,音刺激における聴覚反応について検索を行った。小児自閉症患者9名と健常者15名を対象とした。刺激音は,小児自閉症患者の両親を対象に35項目のアンケート調査を行い,聴覚反応が有意と認められた10種類の日常生活音を用いて,音刺激前,中,後の心拍数の変動を観察した。その結果,小児自閉症患者は健常者群に比較し,常に心拍数の高い状態にあり,心拍数の変動についても大きかった。また,音刺激に対しては反応特異性が認められなかった。健常者群では音の持つ意味の理解力において一致した心拍反応として見られたのに対し,小児自閉症群は有意な心拍数変動が認められなかった。これらのことから,小児自閉症患者は音の持つ意味の理解力に乏しく,外界からの音を単に音刺激の強弱,リズム等として感受している可能性が示唆された。

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© 1997 杏林医学会
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