杏林医学会雑誌
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QPCR法による遺伝子発現量の定量に関する基礎的研究
中山 裕巳長島 鎮古屋 博黒木 義浩早川 るり子水野 斎司吉永 惠実阪井 哲男脇坂 晟
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1998 年 29 巻 4 号 p. 563-570

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抄録

遺伝子発現の状況を知る目的で逆転写産物のcDNA量を高感度に測定するQPCR (quantitative polymerase chain reaction)法の測定条件の検討を行った。マウス肝より抽出したRNAについて逆転写反応を行い,生じたcDNAをさらに化学発光物質TBR [tris (2,2'-bipyridine) ruthenium (II) chelate]およびビオチンで標識したp53遺伝子由来のプライマーを用いてPCR (polymerase chain reaction)により増幅し,その産物をストレプトアビジンが付いた磁気ビーズに結合させてQPCR装置に導入,TBRの電気化学的発光を測定した。PCRの回数が30回の場合,反応系中のRNA量が0.01から0.25μgの間では発光強度はRNA量の増加にほぼ並行して増加した。PCRの回数が20回および25回ではRNA量が0.1から1μgの間ではRNAの量の増加に伴い,発光強度の増大がみられた。本法により最低1.0×10^<-16>モルのcDNAを,変動係数13〜14%で,3時間以内に検出できた。反応系中にDNAが約5%程度混入しても影響はないが,約10%存在すると発光強度を10%低下させた。混入したDNAの除去のためRNA標品をDNase処理すると著しく発光強度が低下した。

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© 1998 杏林医学会
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