杏林医学会雑誌
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妊娠と基礎体温 (1) : 妊娠成立から分娩終了までの正常基礎体温の観察
本多 啓阿部 穰笹川 重男鈴木 正彦
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1972 年 3 巻 3 号 p. 149-156

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抄録

基礎体温検査法は, 生体内の性ステロイドホルモン環境の変動を表わす簡易ですぐれた指標として, 種々の婦人科疾患の診療に用いられているが, 妊娠時の基礎体温については詳しい報告がなく, 妊娠の早期診断として用いられる以外は臨床的価値が明らかでない。われわれはこの点について再検討するため5例の妊婦について妊娠全期間中の基礎体温を観察した。妊娠中の基礎体温を受胎期, 妊娠高温期, 下降期に分けると, 受胎期の平均は14.8日, 妊娠高温期は平均71.8日, 下降期の開始は非妊時低温相最終日から数えて約89日, 最終月経から数えて約103日であつた。妊娠高温期の最高温は平均37.25℃で非妊時高温相の最高温平均37.05℃よりも0.2℃高く, これは妊娠の早期診断上の重要なポイントとなる。また下降期の最低温についても全例が非妊時低温相の最低温を上廻ることが観察された。これらの事実に基づいて妊娠時の基礎体温測定の種々の診断的意義の可能性を考按した。

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© 1972 杏林医学会
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