2001 年 32 巻 2 号 p. 151-155
症例は64歳,男性.アルコール性肝硬変症と確定診断の後禁酒により,肝機能はほぼ正常に保持されていた。労作時呼吸困難のため当科へ入院し,著明な低酸素血症(PaO_236.1mmHg)を呈し立位にてさらに増悪した。呼吸機能検査では肺活量,一秒率は正常だったが著明な拡散障害を認めた。MRアンギオグラフィでは拡張した肺血管が描出され,肺血流シンチグラフィでは肺外臓器への集積が認められた。以上よりHepatopulmonary syndromeと診断し,各種薬物療法を試みたが反応には乏しかった。本症は病態や原因がいまだ不明確であるが,進行した肝硬変症に合併することが多いとされている。代償性肝硬変症に著明な低酸素血症を呈し,その病態を考える上で興味ある症例と考え報告した。