杏林医学会雑誌
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脳への電気刺激法による腓腹筋誘発電位の解析 : 脊髄機能評価への試み
詫摩 博史
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2001 年 32 巻 3 号 p. 157-165

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抄録

脊椎・脊髄の手術中の脊髄機能モニタリングを確立するため,経頭蓋的電気刺激法により誘発される下肢腓腹筋運動活動電位(Br(E)-MsEP)の性質,および脊髄と根糸損傷の影響を,成ネコ29匹を用いて解析した。標本ごとに刺激条件は異なったが,刺激間隔約3msで連発刺激をすることによりBr(E)-MsEPを誘発する開催を50から100Vに抑えることができ,電流滑走がなく潜時は約12msであった。そこで二相性波での最大下振幅のBr(E)-MsEPを基準として,脊髄切断あるいは前・後根切断の影響を調べた。Br(E)-MsEPは,記録と同側の脊髄を半切すると消失したが,背側半切では影響を受けなかった。このことから頭蓋刺激によりBr(E)-MsEPを誘発させる系の脊髄内伝導路は,脊髄の同側でかつ主に前半部であった。根糸切断実験では, Br(E)-MsEPは,坐骨神経の入力する3髄節の後根糸を切断すると振幅は89%に減少し,潜時は109%に遅延し,前根切断で電位は消失した。簡便かつ低侵襲性で術野の影響を受けにくいBr(E)-MsEP記録法は,主に脊髄運動路機能を反映する電位を記録でき,術中の脊髄機能モニタリング法として有効である。

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© 2001 杏林医学会
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