杏林医学会雑誌
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原著
マウスの腫瘍細胞におけるp53遺伝子の変異
—特にDNA結合ドメインの構造変化について—
黒木 義浩阪井 哲男松尾 英男野村 明黄 舜範水野 斎呉屋 朝幸脇坂 晟
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2003 年 34 巻 2 号 p. 91-101

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抄録
腫瘍細胞における細胞周期抑制遺伝子の変異と細胞の癌化との関係を明らかにするため, メチルコラントレンによって誘導された線維肉腫細胞 (M eth A細胞) における, 癌抑制遺伝子p53の変異解析を行った。腫瘍細胞よりDNAを抽出し, Sangerのdideoxy termination methodに基づいたダイレクト・シーケンシング法により塩基配列の解析を行い, 同遺伝子のexon部分の全2,189塩基中, 1,450塩基 (66.2%), およびコーディング領域, 全1,173塩基中586塩基 (50.0%) の配列を明らかにした。この配列中に, 35カ所の点変異と20カ所のコドンの変異を認めた。グアニンの変異率 (3.0%) が最も高く, チミン (1.1%) は, 最も低かった。変異により生成する塩基の頻度はチミン (4.5%) が最も高く, グアニン (0.6%) が最も低かった。コドンの変異から推定されるアミノ酸の変異は, exon5に8カ所 (約17%) と, 集中的に変異が見られた。また, この部位に停止コドン (TGA) の生成, DNA-binding domainを構成するZn-finger構造の中の変化などが見られた。この様なp53の構造の変化が癌化の原因となる可能性が示唆された。
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© 2003 杏林医学会
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