杏林医学会雑誌
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初回前壁中隔梗塞1枝病変例の発症1ヶ月後の標準12誘導心電図aVL誘導所見による慢性期左室拡大の予測
桑原 渉加地 英生清水 尚志宮山 和彦信太 研二高昌 秀安吉野 秀朗
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2005 年 36 巻 2 号 p. 127-141

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抄録

心筋梗塞後の左心機能の悪化は慢性期の心不全の発生や予後不良の原因となり臨床上の大きな問題点である。我々は発症1ヶ月後の心電図所見で発症3ヶ月後の左室機能を予測できるか否かを左室造影より得られた左室駆出分画(LVEF), 左室拡張末期容積係数(LVEDVI), 左室収縮末期容積係数(LVESVI)で検討した。対象は初回前壁中隔梗塞の1枝病変例で入院し急性期にカテーテル治療が行われた85例である。発症1ヶ月後の心電図でaVL誘導に異常Q波や陰性T波, 陰性T波を伴う異常Q波を認める症例は, 発症3ヶ月後の左室機能は低下していた。発症3ヶ月後の左室機能を予測する因子を単変量解析を行い検討し, 更に抽出された因子を用いて多変量解析を行った結果, LVEFの悪化の予測因子として責任病変がAmerican Heart Association (AHA) #6であること, Peak CPK値が高値であること, 心電図所見でaVL誘導に陰性T波を認めること, 陰性T波を伴う異常Q波を認めることが抽出された。LVESVIについてはAHA#6, aVL誘導の陰性T波, 陰性T波を伴う異常Q波, LVEDVIについてはAHA#6, Peak CPK値が悪化の予測因子として抽出された。前壁中隔梗塞において慢性期の左室機能は発症1ヶ月後の心電図所見でaVL誘導に陰性T波を認める症例(LVEF: 陰性T波を認める症例=58.6±12.6% v.s.認めない症例=66.0±11.0%, p<0.05), 陰性T波を伴う異常Q波を認める症例で低下することが判明した(LVEF: 陰性T波を伴う異常Q波を認める症例;57.1±12.2% v.s.正常例;66.5±11.5%, p<0.05)。

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© 2005 杏林医学会
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