杏林医学会雑誌
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超音波組織性状診断によるDuchenne型進行性筋ジストロフィー症の心筋障害の評価
山根 忍坂田 好美重山 俊喜吉野 秀朗
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2005 年 36 巻 2 号 p. 120-126

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抄録

Duchenne型進行性筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy : DMD)は若年時より骨格筋変性とともに心筋変性を生じる疾患である。心筋変性の評価を, 心臓超音波後方散乱信号(Integrated Backscatter : IBS)による超音波組織性状診断を用いて非侵襲的かつ定量的に行い, DMD症例の心筋変性の特徴について検討した。左室収縮能が正常で左室壁運動障害を認めないDMD症例(n=10)と比較し, 左室後壁に限局した壁運動異常を認めた症例(n=36)では心筋変性の指標になる心筋左室後壁心筋IBS値の周期性変動(cycle variation : CV)は減少し(11.4±2.5dB vs 8.7±1.8dB; p<0.05), 収縮遅延指数(Time delay index : TDI)は増大していた(0.77±0.17 vs 1.1±0.24; p<0.05)。同様に, 左室収縮能が正常で左室壁運動障害を認めないDMD症例(n=10)と比較し, 壁運動障害が左室後壁から左室全周性に進展し左室収縮能が低下した症例(n=6)においてもCVは減少し(11.4±2.5dB vs 5.8±1.1dB; p<0.001), TDIは増大していた(0.77±0.17 vs 1.34±0.20; p<0.001)。左室収縮能は正常であるが左室後壁に限局した壁運動異常を認めた症例(n=36)の超音波組織性状診断所見の特徴は, 心内膜側心筋のCVは減少せず(11.4±3.1dB vs 9.4±2.8dB; n.s.), 心外膜側心筋のCVが有意に減少している(10.0±2.8dB vs 5.5±1.9dB; p<0.001)ことであった。DMDの心筋変性の特徴は左室後壁の心外膜側心筋よりはじまり, 心内膜側に進展するとともに左室全周性に広がると推測された。IBSによる超音波組織性状診断を使用することによりDMD症例の心外膜側心筋に限局した早期の心筋変性が評価できた。また, この方法により, 心筋変性が局所心筋内で進展するとともに左室全周性にひろがる進行の程度も非侵襲的に評価でき, 臨床的に有用な方法であった。

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