2005 年 36 巻 4 号 p. 329-339
炎症性腸疾患(IBD)は重要な疾患であるにもかかわらず,病因はなお解明されていない。実験モデルとしてデキストラン硫酸(DSS)を投与するDSS大腸炎モデルと,リノール酸強化飼料で飼育したマウスにYersinia enterocolitica heat-shock protein 60 (Ye-hsp60)を腹腔内投与するYe-hsp60大腸炎モデルがある。DSSモデルは広く用いられている大腸炎モデルマウスであるのに対して,Ye-hsp60モデルは我々が開発したモデルである。これらのモデルマウスの脾臓と大腸上皮細胞間リンパ球(IEL)を採取しフローサイトメトリーによりCD25^+ CD4^+細胞を検討した。大腸IELのCD25^+ CD4^+細胞は,肉眼的血便が見られない(以下,血便-)DSS大腸炎マウスで著明に増加していたが,血便が見られる(以下,血便+)DSS大腸炎マウスでは有意の変化がなかった。Ye-hsp60大腸炎の大腸IELではCD25^+ CD4^+細胞は減少していた。脾臓でのCD25^+ CD4^+細胞は,血便(-)のDSS大腸炎マウスで減少していたが,血便(+)のDSS大腸炎マウスとで有意の変化がなかった。またYe-hsp60大腸炎マウスではCD25^+ CD4^+ CD69^+細胞が低下していた。このように脾臓と大腸IELでのCD25^+ CD4^+細胞のパターンは異なっていたことからIBDの病態解明にはYe-hsp60大腸炎モデルとDSS大腸炎モデルのIELにおける抑制性T細胞の解析が有用であると思われた。