杏林医学会雑誌
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セメントレス人工股関節全置換術後の大腿骨の骨萎縮について : 骨代謝マーカーの検討
渡辺 政行
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2005 年 36 巻 4 号 p. 320-328

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抄録

セメントレス人工股関節全置換術(以下セメントレスTHA)後に画像上みられるステム周囲の骨萎縮の発生原因は未だ不明であり,その病態を骨代謝の視点から分析した研究は極めて少ない。本研究では骨代謝マーカーの変動が骨萎縮発生を予測する指標になるか否かについて検討を行った。骨萎縮の指標としては,大腿骨骨幹部ではfemoral index,転子部では骨密度を用いた。対象は術後1年6ヶ月〜3年,平均2年1ヶ月経過した50例と,非手術20例である。手術例は骨萎縮群(以下a群)が37例,非骨萎縮群(以下b群)が13例であり,非手術例(以下c群)は20例である。骨萎縮は,骨幹部では術後24〜48週,転子部では12〜24週に最も多く出現した。骨吸収マーカーとして用いた尿中デオキシピリジノリン(deoxypyridinoline; DPD)及びピリジノリン(pyridinoline; PYD)は,術後4週でa,b両群とも有意に上昇したが,その後a群は8週までさらに増加したのに対してb群は減少を示し,a,b群間に有意差が認められた。この4〜8週でDPD,PYDがa群では20%以上の増加を示し,その後骨萎縮が出現した。この時期における骨吸収マーカーの評価と,その対策は極めて重要であると考えられた。以上のように,骨吸収マーカーは,X線像や骨密度では捉え難い軽微な骨代謝の変化を,早期から定量的に把握する事の山来る指標であり,THA術後の大腿骨における骨萎縮発生の予測と対策に極めて有用であると考えられた。

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© 2005 杏林医学会
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