杏林医学会雑誌
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ラット坐骨神経切断後の修復過程における開口放出関連蛋白質の変動について
工藤 文孝
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2005 年 36 巻 4 号 p. 348-357

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抄録

細胞内で小胞と形質膜の融合過程を制御する上で中心的な役割を担うsoluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachement protein receptor (SNARE)蛋白質は,神経細胞突起の成長端(成長円錐)にも局在し,神経突起の形成に重要な役割を果たしていると考えられている。本研究はラット坐骨神経切断縫合手術後の再生過程で,HPC-1/syntaxin1A, SNAP25, synaptotagmin-1等のSNARE蛋白質の発現量の変動をウエスタンブロット法及び免疫組織化学的手法を用い,脊髄レベルで検討した。ウエスタンプロット法による解析では,腰髄全体で,蛋白質発現量は縫合後30分で処置前に比し有意に低下したが,切断刺激が直接人力しない胸髄では縫合後48時間まで,経時的変動はなかった。詳細な免疫組織化学的検討では,HPC-1/syntaxin1Aは縫合後30分で腰髄切断側前角での発現量が処置前に比し有意に低下した。SNAP25は処置前に比し若干低下したものの有意差はなかった。c-Fosは縫合後30分で前角,後角共に発現が有意に増加し,それ以後減少した後,3日で処置前レベルになった。本研究の結果は,神経軸索の発芽,伸長に関与すると考えられているSNARE蛋白質の発現量が,神経損傷直後から変動し,再生過程が極めて早期から開始する可能性を示唆した。

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© 2005 杏林医学会
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