杏林医学会雑誌
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原著
当院における主要グラム陽性菌6菌種の薬剤感受性の過去5年間の年次動向:1999-2003
横山 琢磨西 圭史岡崎 充宏和田 裕雄石井 晴之武田 英紀渡邉 秀裕青島 正大永井 茂渡邊 卓後藤 元
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2007 年 38 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

優れた抗菌力と幅広いスペクトルを有する抗菌薬が登場する一方で,methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)やvancomycin-resistant enterococci(VRE)などの多剤耐性菌の増加が報告されている。本研究では,当院における最近5年間(1999年~2003年)のグラム陽性菌すなわちMRSA,methicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA),Staphylococcus epidermidesEnterococcus faecalisEnterococcus faeciumStreptococcus pyogenesStreptococcus pneumoniae(合計18,065菌株)について主要抗菌薬に対する耐性率を調査した。S. aureusのうちMRSAは73%であった。MRSAはペニシリン系,セフェム系,イミペネム系に対して100%耐性を示したが,vancomycin(VCM),teicoplanin(TEIC)に対しては耐性株を認めなかった。しかしarbekacin(ABK)では1%の菌株が耐性であった。外来患者から分離されたMRSAは3%から6.5%と増加しており,当院が属するコミュニティでもMRSAが拡がっていることが推測された。S. epidermidesではoxacillin(MPIPC)耐性菌株が増加していた(73~83%)。また,erythromycin(EM),clindamycin(CLDM),levofloxacin(LVFX),fosfomycin(FOM)に対する耐性菌株も増加していた。E. faecalisではペニシリン系の感受性は保たれていたが,E. faeciumでは,ペニシリン系,EM,LVFX,FOM,imipenem(IPM)に対する耐性が高度だった。Minocycline(MINO)に対する耐性率はいずれのenterococciでも低下していた。S. pneumoniaeに関しては,ペニシリン耐性株は49~64%,EMに対しては64~79%に達したが,LVFX耐性は3%前後であった。S. pyogenesの耐性菌はEMに対しては約10%に,MINOに対しては約30%に認めたが,ペニシリン系やセフェム系には感受性が保たれていた。

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© 2007 杏林医学会
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