1973 年 4 巻 2 号 p. 75-80
最近の精神科医療の進歩は, 日常臨床のあり方を, 伝統的な病院における外来, 入院から, その病者の属する家族, 地域を含める方向へと変りつつある。これはただ形式的なものではなく, 精神障害の病因論が, 個人の精神病理に重点がおかれた伝統的な考えから, その病者の属する家族, さらには, 地域にまでも拡がつて来ていることを示すのである。われわれは, 杏林大学医学部精神科創設当初から, このような学問的進歩を考え, 杏林精神衛生センター案で答えて来た。本論では, 伝統的な精神医療ではうまく処理出来なかつた反省例をくわえて, センターの基本案について若干論じたい。