2018 年 49 巻 1 号 p. 3-17
本研究の目的は在宅高齢者の栄養状態の把握と,加齢と並行して低栄養状態に陥る要因を明らかにしようとするものである。方法としては在宅高齢者に対し,血清アルブミン値を基準とした栄養状態を調査し,次に家族介護者と在宅医療専門職に対する面接調査を行い,内容分析の手法にて分析を行った。 その結果,高齢者の1割強が低栄養状態であり,高齢になるほど低栄養状態に陥りやすく,改善が難しい傾向が見られた。その要因として,経済的事情や介護上の問題などにより家で十分な栄養が補給されないこと,訪問栄養食事指導の利用が進んでいないこと,病院同様の栄養支援に特化したチーム作りが在宅医療においてはまだ難しいことが明らかになった。在宅医療専門職のうち,特に訪問看護師は美味しさ・食べやすさ・栄養価などについて家族介護者から質問を受け,QOL維持のために食べる楽しみへの配慮が求められていた。今後高齢者の栄養状態に関わる各職種のうち,特に,看護師の役割が大きくなっていくことが示唆された。