杏林医学会雑誌
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原著
人工心肺に使用される静脈リザーバの血流解析
中村 淳史四倉 正之
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2022 年 53 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

人工心肺装置のアクシデントには静脈血リザーバ(VR)内の血栓形成があり,VR内部の血流状態が関与していると考えられる。本研究はVRの静脈血の流れについて,VRに微小気泡を流入させ,超音波エコー画像から輝度値を計測し,その立ち上がり時間を静脈血のフィルタ外への流出開始時間として2種類(TR,MR)を検討した。
両者とも流量が多くなると流出開始時間が短くなったが,TRは各レベル間の時間差は短く,MRでは長い傾向であった。VR下部(10〜70 mL)はTR : 13.6±4.2秒,MR : 15.6±6.5(P=0.051)となり差は認められなかったが,VR上部(100〜600 mL)ではTR : 17.2±6.7秒,MR : 37.5±11.6秒(P<0.01)となりVR間で流出開始時間に有意差が認められた。本研究により静脈血の流動状態を明らかとなり,使用するVR内の流れを把握しておく事は人工心肺の安全性を高める事が出来ると考えられた。

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