捕食,咀嚼,口腔期,咽頭期,食道期という摂食嚥下の過程には,生体のさまざまな解剖学的,生理学的システムが関与しており,種々の機能的あるいは器質的な異常が摂食嚥下障害を引き起こす。したがって,摂食嚥下障害は複数の診療科の医師や言語聴覚士,看護師といった多職種の医療従事者がかかわる領域である。また,摂食嚥下障害の診断から治療まで完結して行うことができる医療機関は極めて少なく,各医療圏において限られた人的資源を有効に活用するためには二次医療圏の基幹病院と三次医療圏の中核である大学病院が役割を分担し,病病連携および病診連携を密にして,摂食嚥下診療の地域ネットワークを形成することが望まれる。そのためには,三次医療圏内に摂食嚥下障害の診療の中核となる摂食嚥下センターを組織することが望ましい。本稿では,全米で最初に集学的摂食嚥下障害の診療を展開したジョンズホプキンス嚥下センターと,これをモデルに日本初の摂食嚥下センターとして組織された杏林大学医学部付属病院摂食嚥下センターを紹介し,その果たしてきた役割について述べた。当センター設立後十数年を経て,複数の大学病院や総合病院に摂食嚥下センターが組織されてきており,当院での取り組みが高く評価されていると考えるとともに,このようなチームがさらに各地で組織されることを期待したい。