杏林医学会雑誌
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特集「摂食嚥下障害の診療up-to-date」
クリニックにおける嚥下診療と嚥下訓練の効果
西山 耕一郎
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2022 年 53 巻 2 号 p. 75-81

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抄録

我国は高齢者嚥下障害例が急増している。誤嚥(嚥下)性肺炎の原因は,食物誤嚥,唾液誤嚥,胃食道逆流誤嚥がある。食物を誤嚥すると気道で炎症が起きて,びまん性嚥下性細気管支炎を発症し,さらに進行すると誤嚥性肺炎を発症する。嚥下障害の主因は咽頭期であり,口腔ケアとアイスマッサージだけでは嚥下機能の改善は期待出来ず,咽頭期の訓練や呼吸機能訓練が推奨されている。具体的には,喉頭挙上訓練として,嚥下おでこ体操,顎持ち上げ体操,発声訓練として音読やカラオケ,呼吸機能訓練として,口すぼめ呼吸などである。また高齢者の誤嚥性肺炎は,治らないから治療しないという意見もあるが,嚥下機能障害の病態や重症度を正しく評価し,嚥下機能に対応した食事形態や栄養管理を指導し,かつ嚥下自主訓練を毎日行うことで,誤嚥性肺炎による入院を減らし,医療費の削減を期待できる点に注目したい。

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