杏林医学会雑誌
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特集「摂食嚥下障害の診療up-to-date」
口腔粘膜刺激による術後合併症の予防効果〜経口摂取の重要性について〜
池田 哲也
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2022 年 53 巻 2 号 p. 67-73

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抄録

当院では2016年4月から周術期管理センターにおいて,歯科スタッフが常駐し口腔評価を行っている(図1)。これにより,全ての全身麻酔症例の口腔評価を行うシステムが確立し,漏れのない周術期口腔管理(以下,口腔管理)を実現することが可能となった。診療のなかで,疾患や術式によっては,術前のみならず術後にも絶食となる患者に遭遇する。絶食中の患者では,口腔乾燥により口腔内細菌数が増加するため唾液分泌促進を目的とした口腔粘膜刺激を行っている。
当センターにおいて,口腔粘膜刺激を柱とした口腔管理を行った群と当システムが導入される前の口腔管理を行わなかった群に分け,平均術後在院日数などについて比較検討を行った。その結果,呼吸器外科,消化器外科,頭頸部腫瘍,整形外科,泌尿器科および心臓血管外科において平均術後在院日数が減少していた。さらに,消化器外科と呼吸器外科では広域スペクトル抗菌薬の投与件数も減少していた。口腔内環境が悪化する患者では,唾液分泌を主な目的とした口腔管理を行うことの重要性が示唆されている。

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