杏林医学会雑誌
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総説
エンドトキシン誘発の全身性炎症に対してマウス脳が応答する免疫反応
島田 厚良村田 麻喜子小原 映
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2023 年 54 巻 2 号 p. 49-57

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抄録

脳は免疫系とシステム間相互作用を積極的に行う。我々は成体マウスにエンドトキシンを単回腹腔内投与し,全身性炎症に対して頭蓋内のどの組織が応答し,どんな免疫反応を示すのかを研究した。エンドトキシン投与の直後には脈絡叢が即応し,1時間後にはマクロファージがIL-1βを発現した。投与4時間後には脈絡叢内でCCL2,CXCL1,CXCL2,IL-6が急激に産生された。これらサイトカインは脳実質へと送られ,脳実質内ではアストロサイトが最初に受容し,4〜24時間後には自らCCL11,CXCL10,G-CSFを産生した。アストロサイトが産生するサイトカインの受容体はミクログリアが有し,48時間後には活性化された。活性化ミクログリアはM2に相当する遺伝子発現を行い,神経炎症の消退に貢献した結果,サイトカインの脳組織内濃度は72時間後までに健常レベルに戻った。ここでは脳が示す免疫応答を総説として報告する。

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