杏林医学会雑誌
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54 巻, 2 号
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原著
  • 絹川 朋美, 松岡 惠, 照屋 浩司
    2023 年 54 巻 2 号 p. 31-39
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    【目的】妊娠中の身体活動がマイナートラブルとこれらに付随する心理状態への影響を明らかにする。【方法】対象は外来に通院中の健康な妊婦である。加速度計による客観的身体活動量と自記式質問紙による主観的身体活動量,マイナートラブルの有症状況,心理状態を調査し,ロジスティック回帰分析によりマイナートラブルとの関係を検討した。【結果】便秘関連症状群でマタニティ・スポーツ(OR=0.51),睡眠関連症状群で屋内での掃除(掃除機掛け等)(OR=1.38)で有意なオッズ比を示した。【考察】本研究ではマタニティ・スポーツの種類を限定していないため便秘への効果を厳密に示すことはできないが,食事や下剤などの方法に加えて,便秘の対処法として選択肢を増やせたことは妊婦にとって有用であるといえる。また,家事活動である屋内での掃除が増えたにもかかわらず睡眠関連症候群が増えた。これは,日常の身体活動が睡眠に影響するものとして妊娠中の睡眠時間は家事活動を行なうほど長くなることが報告されているが、それと反する結果であった。

症例報告
  • 増古 康子, 濵野 翔, 三井 清誉, 川原 亜友美, 成田 雅美
    2023 年 54 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    今回,コクサッキーウイルスA6(coxsackievirusA6 : CVA6)によるeczema coxsackiumを発症したアトピー性皮膚炎の6歳女児例を経験した。初診時,病歴と臨床症状より単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus : HSV)によるカポジ水痘様発疹症(eczema herpeticum)と考えアシクロビル投与を開始したが,後に入院時血清HSV抗体価陰性,CVA6抗体価陽性が判明し,eczema herpeticumではなくeczema coxsackiumと診断した。Eczema herpeticumでは角膜や眼周囲の症状がみられることが多いが,本症例では認めなかった。眼周囲の皮疹が軽微な場合には,HSV以外のウイルス感染を疑い,CVA6を始めとする原因ウイルスの検索をすることが診断の一助となる可能性がある。

総説
  • 島田 厚良, 村田 麻喜子, 小原 映
    2023 年 54 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    脳は免疫系とシステム間相互作用を積極的に行う。我々は成体マウスにエンドトキシンを単回腹腔内投与し,全身性炎症に対して頭蓋内のどの組織が応答し,どんな免疫反応を示すのかを研究した。エンドトキシン投与の直後には脈絡叢が即応し,1時間後にはマクロファージがIL-1βを発現した。投与4時間後には脈絡叢内でCCL2,CXCL1,CXCL2,IL-6が急激に産生された。これらサイトカインは脳実質へと送られ,脳実質内ではアストロサイトが最初に受容し,4〜24時間後には自らCCL11,CXCL10,G-CSFを産生した。アストロサイトが産生するサイトカインの受容体はミクログリアが有し,48時間後には活性化された。活性化ミクログリアはM2に相当する遺伝子発現を行い,神経炎症の消退に貢献した結果,サイトカインの脳組織内濃度は72時間後までに健常レベルに戻った。ここでは脳が示す免疫応答を総説として報告する。

  • 村松 憲
    2023 年 54 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2023/07/07
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    糖尿病患者には下肢筋力低下やバランス障害などの運動障害が生じ,その原因は糖尿病性末梢神経障害や筋実質の障害に求められてきた。しかし,近年,糖尿病患者や糖尿病モデル動物において大脳皮質運動野や皮質脊髄路といった身体運動を制御する中枢神経系(運動系)に異常が生じることが示され,運動障害の新たな要因として注目されている。また,運動系の異常を改善する効果的なリハビリテーションは明らかにされていなかったが,最近の糖尿病モデル動物を対象にした研究によって,スキル運動(運動学習を伴う全身運動)が赤核脊髄路に可塑的変化を誘導し,それが損傷した皮質脊髄路の代償路として機能することによって,一部の運動機能が回復することを明らかになった。本総説では糖尿病による運動系の障害の病態とそのリハビリテーション開発の可能性について自らの研究成果をもとに論述する。

特集「杏林大学保健学部リハビリテーション学科新設」
杏林大学学位論文要旨および審査要旨
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