杏林医学会雑誌
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原著
低浸透圧ストレスが胃癌培養細胞株の悪性度に与える影響の検討
吉本 恵理櫻井 裕之山賀 貴野﨑 江里子阿部 展次
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2023 年 54 巻 3 号 p. 121-132

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抄録

胃癌腹膜転移再発の予後は悪く,原因として腹腔内や管腔内に遊離した癌細胞の存在が指摘されている。その予防法として低張液を用いた腹腔や管腔内の洗浄が有望であるという報告は多い。しかし洗浄後に生存した癌細胞が悪性度の高い形質に変化することが懸念されるため,胃癌細胞株MKN7(高分化),MKN74(中分化)を蒸留水に10 分間,MKN45(低分化)を5分間暴露させ生き残った細胞株を再培養し,増殖能,浸潤能,薬剤感受性について検討した。MKN7,MKN45は増殖能に有意差はなかったが,MKN74 は48時間で有意に増加し,72 時間で有意差はなくなった。浸潤能は,MKN74,MKN45で有意な低下があり,MKN7では上昇する可能性が示唆された。薬剤感受性に有意差はなかった。今回,蒸留水暴露により,高・中分化腺癌であるMKN7,MKN74では,悪性度が高くなる可能性がみられるものもあったが,低分化腺癌であるMKN45では,増殖能,浸潤能,薬剤感受性に変化を来さなかったことは朗報であったと考えられる。

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