杏林医学会雑誌
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症例報告
上部消化管内視鏡所見を契機に診断された胃梅毒の1例
堀江 宗宍戸 カンナ三浦 みき平塚 智也宮本 尚彦柴山 隆宏楠原 光謹嶋崎 鉄兵大野 亜希子倉井 大輔藤原 正親久松 理一
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2023 年 54 巻 4 号 p. 193-199

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抄録

症例は55歳男性。数カ月前からの食思不振と2週間前からの腹痛,発熱を主訴に当院を受診した。血液検査で軽度の貧血,腹部骨盤造影CT検査で胃壁の肥厚と周囲のリンパ節腫大を認めた。上部消化管内視鏡で胃体部から前庭部にかけて易出血性の不整形潰瘍が多発していた。梅毒血清反応が陽性であり,無痛性の陰部潰瘍も認めた。免疫染色でTreponema pallidumが検出され,胃梅毒の診断となった。持続性ペニシリン筋肉注射の治療で5週間後に胃潰瘍は瘢痕化,陰部潰瘍も改善した。
梅毒患者のうち消化管病変の頻度は約0.1%程度と報告されているが,梅毒患者は近年増加傾向にあり,梅毒感染に伴う消化管病変を十分理解しておく必要がある。胃梅毒の内視鏡像は悪性疾患との鑑別が困難で,確定診断は生検からT. pallidumの検出が望ましい。上部消化管内視鏡で不整な潰瘍病変を認めた際には,胃梅毒も鑑別に挙げ,問診,身体診察,梅毒血清反応,病変部の生検組織を総合的に診断する必要がある。

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