共生学研究
Online ISSN : 2759-2782
共生社会を考える上でなぜことばに迫る必要があるのか
ことばにまつわるオートエスノグラフィーからの視座
中井 好男中山 亜紀子岡田 祥平
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2024 年 1 巻 p. 88-120

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抄録
社会にはそこに暮らす人々の対話があり、対話はことばとそれを用いた活動(コミュニケーション)をその基盤とする。そのため、共生社会の実現を考える上で、ことばによるコミュニケーションをめぐる社会的課題を避けて通ることはできない。そこで、筆者らは、ことばという視点から共生を考えるシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、日本語・国語教育、日本語学、マイノリティに関する研究と教育に携わる筆者3名がそれぞれの「ことば」をめぐる経験を記したオートエスノグラフィーをもとに、マイノリティ当事者と障害者の社会参加を支援する実践家とことばと共生社会のあり方について議論した。本フォーラムは、そのシンポジウムにおける議論についてまとめたものである。共生には公正性の担保が必要不可欠であるが、その実現を阻むマジョリティの特権を切り崩すためのマジョリティ自身の脱構築の必要性が指摘された。また、逆説的ではあるが、ことばを用いない活動、つまり具体的な身体を伴って同じ場を共有することによって生じる「コミュニケーション」も共生の基盤をなす可能性が考えられる。
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© 2024 共生学会
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