教育哲学研究
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日本の教育思想の伝統
ヘルバルト教育学の導入を中心として
是常 正美
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1975 年 1975 巻 31 号 p. 8-13

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抄録

吾が国教育思想の伝統を考察するにあたっては、吾が国公教育制度の基本的体制が確立した明治期の教育思想の発展の跡を辿りながら、それの底流にある本質的なるもの乃至永遠なるものを捉らえ来って、それを吾が国教育の現代的状況や未来的展望との関わりにおいて現代化するための歴史的基盤を提示することが、重要な探究課題であると考えられる。ところで明治初年の教育は、周知の如く明治元年の「学舎制」やそれに続く「皇漠学両学所規則」にも明らかなように、漠土・西洋の学を皇道の羽翼とする皇道主義の立場に発する.その後昭和五年の「学事奨勧に関する被仰出書」や「学制」の公布を基礎とし、明治十二年の「日本教育令」においてひとまず完結点に達すると同時に、同十二年の「教学大旨」に発して、皇道主義・儒学主義・洋学主義の葛藤による幾多の迂余曲折を経ながら、明治二十三年の「教育勅語」の制定に至って、明治期教育思想発展の一応の完成点に到達し、その後の発展は、いわゆる「教育勅語教育体制」の充実期となるわけであり、それが終戦後の「教育基本法教育体制」にまで続いていることは言うまでもない。かかる「教育勅語教育体制」の整備充実と明治初年以来の自由民権運動との関わりの問題が、日本教育史上の重要な問題の一つとなっていることは周知の如くであるが、それはここでの問題にはしない。

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