2017 年 63 巻 p. 79-85
長崎県諫早湾干拓地における環境保全型農業を支援するための技術の一つとして,天敵温存植物を利用した土着天敵類による害虫管理技術の確立を目的に,春作ジャガイモ栽培圃場内に天敵温存植物の候補としてヒメイワダレソウを植栽し,ジャガイモに寄生するアブラムシ類とその土着天敵類,およびヒメイワダレソウ植栽地における土着天敵類の発生消長を調べた。その結果,ジャガイモの株上では,アブラムシ類とアブラバチ類(マミー)の発生ピークがほぼ一致した。また,ジャガイモ株上のアブラバチ類(マミー)とヒメイワダレソウ植栽地で捕獲されたアブラバチ類成虫の個体数推移もほぼ一致した。ヒメイワダレソウ植栽地におけるアブラバチの優占種は,ジャガイモを加害するモモアカアブラムシやジャガイモヒゲナガアブラムシに寄生するギフアブラバチであった。以上のことから,ヒメイワダレソウは天敵温存植物として有効な可能性があると考えられた。