2020 年 66 巻 p. 1-5
温暖化により気温が上昇した条件下におけるイネ紋枯病の発生増加および収量への影響を推定するため,2013~2017年の日平均気温と発病程度の関係および全体の被害度と収量の関係を解析した。7~8月の日平均気温 (x) と発病株率 (y) の回帰分析から y=6.93x-131.24の回帰式を得た。出穂10日前から出穂20日後の日平均気温 (x) と病斑高率 (y) の回帰分析から y=3.73x-44.49の回帰式を得た。7~9月の日平均気温 (x) と全体の被害度 (y) の回帰分析から y=6.57x-144.73の回帰式を得た。日平均気温が1℃上昇すると,発病株率で6.93%,病斑高率で3.73%,全体の被害度で6.57上昇すると推測された。2016年,2017年の全体の被害度 (x) と収量 (y) の関係から y=-3.99x+732.18,y=-1.83x+566.27の回帰式を得た。2年分の回帰係数から減収量を推測すると,日平均気温1℃上昇によって増加した全体の被害度により,2016年で26.21kg/10a,2017年で12.02kg/10a の減収が生じたと推定される。以上の結果から,温暖化によって,イネ紋枯病の全体の被害度が増加し,収量への被害が増加すると推測された。