九州病害虫研究会報
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病害
コムギ収穫後の水田化に伴う赤かび病菌集団の動態解析
鈴木 文彦 冨村 健太宮坂 篤吉田 めぐみ中島 隆
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2020 年 66 巻 p. 6-11

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抄録

水田化が赤かび病菌集団に及ぼす影響を解析するため,試験地にわずかしか分布しない Fusarium graminearum s. str. の15ADON 産生型菌株をマーカー菌として用い,その変動を調査した。はじめに,感染コムギ穂,および感染コムギ粒を水田に埋設し,湛水条件下での生存期間を調査した結果,赤かび病菌は長くても1か月以内に死滅することを確認した。次に,2006年および2007年,前作としてコムギを栽培し,その開花期に圃場全面にマーカー菌を接種し,コムギ収穫後に水田化してイネを栽培した。マーカー菌の分離率は,コムギ穂において約74~80%と高かったが,水田化後に飛散胞子とイネの穂より分離した赤かび病菌集団を調査した結果,マーカー菌の再分離率は,2006年に0.3%(1/286),2007年に0.5%(2/434)と極めて低かった。以上の結果より,コムギに感染した赤かび病菌が水田化後にイネに移行する確率は低いことが示唆された。

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