抄録
原野におけるRhizoctonia属菌の生息生態を把握するため,原野の植生植物と周辺土壌について菌の出現を調査し,その季節的推移についても検討した。Rhizoctonia属菌は表土の比較的浅いところに生息し,深い位置にはあまり見られなかった。また,季節的な出現率の推移では6~9月ではほとんど大差ないが,10月になると減少傾向を示した。植物体から分離されるRhizoctonia属菌は7月,8月はネザサ,6月,9月,10月はノイバラやヤマハギから多く出現するというように季節的変化が認められた。一方,土壌からは2核Rhizoctonia属菌のAG-BおよびR.orvzaeタイプの菌が多く分離されるが,植物残渣並びに植物体根部からはAG-A菌が比較的多く分離された。原野におけるRhizoctontia属菌の生息様式には菌群により差が見られ,R.solaniAG-6の生息も認められたが,特にダイコン根腐病菌であるAG-2-2菌は植物体(ノイバラ,ヤマハギ)の地下部および土壌中の植物残渣から分離され,これらに腐生的に生存していると考えられた。